2026.09.06
親知らずを抜くと小顔になるのか|可能性と限界を歯科医が解説

こんにちは。京都府京都市右京区、西院駅から徒歩4分の京都西院 ライフ歯科・矯正歯科・小児歯科です。
「親知らずを抜くと小顔になる」という話を、口コミやSNSで目にしたことのある方は少なくないでしょう。抜歯を控えている方であれば、少し期待が膨らむ話かもしれません。
先にお伝えすると、可能性としては考えられるものの、断言できることではありません。顎の骨格そのものが親知らずの抜歯で大きく変わるわけではないためです。それでも、条件によっては輪郭の見え方が変わったと感じる方がいるのも事実です。
この記事では、親知らずを抜くと小顔になると言われる理由をひとつずつ確認していきます。そのうえで、抜歯で届く範囲と届かない範囲についてもお伝えします。
さらに、小顔とは少し異なる「口元の印象」という視点にも触れていきます。口元の突出感については、歯列矯正で変えられる部分があります。「自分の場合はどうなのか」を考えながらお読みいただければ幸いです。
目次
親知らずを抜くと小顔になるのかという疑問への答え

この話題は、期待と不安の両方を含んだまま語られることが多いテーマです。効果を強く打ち出す情報もあれば、まったく変わらないと言い切る情報もあります。同じことを調べていても、たどり着く答えが違ってくるのはそのためです。実際のところは、そのどちらとも少し違います。
ここではまず、どこまでが期待できる範囲で、どこからが分からない範囲なのかを確認します。骨格そのものの変化と、見え方の変化を分けて考えていきます。この2つを分けると、情報を読むときの見通しが立ちやすくなります。似た話しが並んでいても、どちらについて述べているかが判別できるようになります。
可能性としては考えられるが、断言はできない
親知らずを抜いたあとに「顔まわりがすっきりした」と感じる方は実際にいらっしゃいます。その感覚を否定する必要はありません。抜歯の前後で見た目が変わる仕組みは、いくつか説明がつくものだからです。
ただし、それが誰にでも起こるわけではありません。また、どの程度の変化になるかを抜歯前に予測することも困難です。歯科医院として「抜けば小顔になります」とお伝えできないのは、変化の大きさを保証できないためです。医療広告に関する指針でも、効果を保証するような表現は用いないこととされています。
可能性としては考えられる、という表現がもっとも実態に近いところです。期待を持っていただくこと自体は問題ありませんが、目的を抜歯だけに置かないことをお勧めします。
変化の出方は条件によって大きく変わる
同じように親知らずを抜いても、感じ方には差が出ます。もともと親知らずの周りに炎症があったかどうかで、抜歯前の状態が違うためです。
生え方が横向きだったのか、まっすぐだったのかによっても異なります。上の親知らずを抜いたのか、下の親知らずを抜いたのかという違いもあります。頬のふくらみに近いのは下の親知らずのほうです。抜いた本数が1本なのか4本なのかによっても、術後の経過は変わります。
「自分はどのケースに当てはまるのか」という点は、口の中とレントゲン画像を見なければ判断できません。
骨格の変化と見え方の変化は分けて考えます
顔の輪郭を語るときには、2つの話が混ざりやすくなります。ひとつは顎の骨そのものの大きさや形が変わるという話です。もうひとつは、腫れや筋肉の状態が変わって見え方が変わるという話です。前者は骨を削る外科手術の領域であり、抜歯で起こる変化ではありません。
親知らずの抜歯で起こりうるのは、主に後者にあたります。「顔が小さくなった」と「顔が小さく見えるようになった」は、似ているようで内容が違います。この記事では、この2つを最後まで分けて説明していきます。
親知らずを抜くと小顔になると言われる4つの理由

小顔になるという話は、根拠のない思い込みだけで広まったわけではありません。医学的に説明のつく現象がいくつか含まれています。ここでは、その理由を炎症、筋肉、骨、食事量の4つに分けて見ていきます。
それぞれについて、どこまでが実際に起こることで、どこからが誤解なのかを順に確認します。ひとつずつ見ていくと、ご自分に当てはまるかどうかを考えやすくなります。4つのうち、ご自身に思い当たるものがいくつあるかを確かめながらお読みください。当てはまるものが多いほど、変化を感じやすい状態だったと考えられます。
理由①親知らずの周りの炎症による腫れが落ち着く
親知らずが斜めや横向きに生えていると、歯ブラシが届きにくくなります。汚れがたまることで、歯ぐきに細菌が入って炎症を起こすことがあります。これは智歯周囲炎と呼ばれる状態です。日本口腔外科学会も、親知らずの周囲が腫れて炎症を起こす症状として説明しています。
炎症が強くなると、周囲の軟らかい組織や顎の骨にまで広がることがあります。頬まで腫れたり、口が開きにくくなったりするのはこのためです。
炎症が続いていた方が抜歯を受けると、原因が取り除かれて腫れが引きます。この変化は骨が小さくなったのではなく、腫れていた状態から元の輪郭に戻った変化です。
炎症が長く続いていた方ほど変化を感じやすくなります
腫れが半年、1年と続いていた場合、その状態が本来の顔だと感じるようになります。抜歯後に腫れが引くと、その落差が大きく感じられます。疲れがたまった時期に腫れて、休むと落ち着くという波を繰り返す方もいます。
逆に、炎症のない親知らずを抜いた場合、この変化はほとんど生じません。「自分は腫れを繰り返していただろうか」という点を振り返ってみると、見当がつけやすくなります。
理由②抜歯後に噛む筋肉の働きが一時的に弱まる
下顎の親知らずを抜いたあとは、口が開きにくくなることがあります。この状態は開口障害と呼ばれます。
筋電図を用いた前向き研究では、抜歯後に咬筋と側頭筋の電気的な活動が低下したと報告されています。別の研究では、術前に平均45.6ミリだった開口量が、術後72時間で平均31.2ミリまで低下したと示されています。
口を大きく開けられない期間は、噛む力も自然と落ちます。筋肉への刺激が一時的に減ることで、頬まわりの張りがやわらいだように感じることがあります。
筋肉の働きは回復とともに元へ戻ると報告されています
同じ研究では、術後7日目に開口量が平均35.6ミリまで回復したと報告されています。筋肉の電気的な活動についても、咬筋のほうが側頭筋より元に戻るまで時間がかかったという結果でした。
つまり、これは一時的な変化として報告されているものです。咬筋が恒久的に薄くなると示した研究は見当たりません。食事が普段どおりに戻れば、筋肉への刺激も戻っていきます。
理由③抜歯した部分の骨がやせる
歯を抜いたあと、その歯を支えていた骨は少しずつやせていきます。これは歯槽骨のリモデリングと呼ばれる自然な治り方です。
抜歯後の骨の変化を集めたシステマティックレビューとメタアナリシスがあります。そこでは大臼歯部について、幅がおよそ3.6ミリ減少したと報告されています。高さの減少はおよそ1.5ミリでした。
別のシステマティックレビューでも、抜歯後6か月で幅3.8ミリ前後の減少が示されています。減少の大部分は最初の3か月に集中することも分かっています。
この現象自体は確かに起こることです。入れ歯やインプラントの計画では、この骨の変化を見込んで治療を組み立てます。
骨がやせる場所と顔の輪郭との距離
ここで大切なのは、骨がやせる場所です。変化が起こるのは、口の中にある抜歯した穴の周囲です。頬の外側から触れる下顎角、いわゆるエラの部分ではありません。
数ミリの変化が起きても、その外側には骨、筋肉、脂肪、皮膚が重なっています。皮膚の表面まで形として現れにくいのは、この距離があるためです。
歯を失ったあとの骨の変化は、入れ歯やインプラントの計画では重要になります。ただし顔の横幅という観点では、意味合いが変わってきます。
理由④術後しばらく食事量が変わる
抜歯後は痛みと開口障害のために、食事の内容や量が変わります。やわらかいものが中心になり、食べる量が減る方もいます。その結果、体重が一時的に落ちることがあります。
顔の脂肪は全身の変化に伴って動くため、これが顔痩せとして感じられる場合があります。特に4本をまとめて抜いた場合は、食事の制限が長引くこともあります。
ただし、これは抜歯そのものの効果ではありません。体重を落とす方法としてお勧めできるものでもありません。傷の治りには栄養が関わりますので、術後は偏りのない食事を心がけてください。
エラの張りをつくっている3つの要素

小顔に関する情報では「エラが張っている方は変化が出やすい」とよく書かれています。ただし、エラの張りといっても中身はひとつではありません。骨の形によるもの、筋肉の厚みによるもの、脂肪によるものがあります。
どれが主体かによって、親知らずの抜歯が関わるかどうかも変わってきます。またそれぞれ、変えられる余地の大きさも異なります。ここでは、その3つの要素を順に見ていきます。
下顎角の骨の形
下顎角は、下顎の骨が耳の下あたりで曲がっている角の部分です。この角度と、外側への張り出しの大きさが輪郭の横幅に影響します。角度が小さいほど、四角い印象の輪郭になりやすいとされています。
東アジア圏の方の輪郭については、咬筋の肥大ではなく下顎角後方部の骨の発達が関わっているとする指摘もあります。
骨の形は生まれ持った要素が大きく、日常の習慣で変わるものではありません。この部分を変えるとなると、骨を削る外科手術の領域になります。歯科の一般的な治療で対応できる範囲を超えるところです。
咬筋の厚み
咬筋は、頬骨弓から下顎の枝の外側に付着している筋肉です。物を噛むときに働く主要な筋肉のひとつです。この筋肉が厚くなると、下顎角のあたりが外側に張り出して見えることがあります。医学的には咬筋肥大と呼ばれ、下顎角の突出を伴うことが報告されています。
奥歯を強く噛みしめたときに、頬の下のあたりが硬く盛り上がるのが咬筋です。指を当てながら噛みしめると、ご自分でも動きを確かめられます。左右に手を当てて交互に噛むと、厚みの差にも気づきやすくなります。
食いしばりや歯ぎしりで咬筋は厚くなることがあります
日中に無意識で歯を食いしばる習慣があると、咬筋には繰り返し負荷がかかります。睡眠中の歯ぎしりも同じように働きます。パソコン作業や運転に集中しているときは、特に気づきにくいところです。
片側だけで噛む習慣がある場合には、左右で厚みに差が出ることもあります。咬筋の厚みは、こうした毎日の使い方によって変わりうる部分です。
皮下脂肪と頬の脂肪組織
皮膚の下にある脂肪と、頬の内側にある脂肪組織も輪郭に関わります。この部分は体重の増減やむくみによって変わりやすい要素です。
前日の水分や塩分の摂り方で、朝の顔の印象が変わることがあります。睡眠不足が続いたときに顔が張って見えるのも、同じ理由によるものです。年齢とともに脂肪の位置や量が変化することも知られています。
どの要素が主体かは見た目だけでは分けられません
「自分のエラは骨なのか、筋肉なのか」と気になる方は多いところです。ただし、鏡で見ただけでこの3つを区別することはできません。触ってみて硬いから骨、という判断も確実ではありません。
咬筋は緊張していると、骨のように硬く感じられることがあるためです。
歯を噛みしめたときの筋肉の動き方や、レントゲン画像での骨の形を確認する必要があります。当院では歯科用CTによって、顎の骨の厚みや形状を立体的に把握したうえでご説明しています。
親知らずの抜歯で届く範囲と届かない範囲

ここまで見てきた3つの要素のうち、親知らずの抜歯が物理的に触れるのはどこなのかを確認します。親知らずが埋まっている場所、咬筋がついている場所、そして抜歯で起こる骨の変化の大きさという3点から見ていきます。位置関係が分かると、期待できる範囲がはっきりしてきます。
骨の名前が続きますが、どこの話をしているかだけ押さえていただければ十分です。口の中の話なのか、頬の外側の話なのかという区別が要点になります。
親知らずが収まっているのは歯を支える骨です
親知らずは前から数えて8番目にある歯で、専門的には第三大臼歯と呼ばれます。下顎では、歯槽骨という歯を支えるための骨の中に位置しています。歯槽骨は歯があることで維持される骨で、歯を失うとやせていく性質があります。
一方、輪郭を形づくるのは下顎枝と下顎角と呼ばれる部分です。これは顎の後方で、耳の下から角に向かう骨の本体にあたります。抜歯によって影響を受けるのは、歯槽骨の範囲にとどまります。
咬筋は歯ではなく下顎の骨についています
咬筋は歯に付着しているわけではなく、下顎の骨の外側に付着しています。上端は頬骨弓に、下端は下顎枝の外側から下顎角にかけて付いています。そのため、歯を1本抜いても筋肉の付着そのものは変わりません。
ただし、噛み方が変われば筋肉の使われ方が変わる可能性はあります。この間接的な影響がどの程度あるかについては、はっきりした結論が出ていません。断定を避けてお伝えしているのは、そのためです。
抜歯によって起こる骨の変化の実際の大きさ
先ほど触れたように、大臼歯部の抜歯後には幅が3.6ミリ前後の減少が報告されています。高さの減少は1.5ミリ前後です。これは口の中を計測した数値で、顔の外側の寸法ではありません。
歯槽骨の内側で起こる数ミリの変化が、皮膚の表面の輪郭として現れることは考えにくいところです。一方で、腫れが引く変化は数ミリでは済まないこともあります。「顔が変わった」という感覚の多くは、骨ではなく腫れの側にあると考えられます。
親知らずの抜歯で変化を感じやすい方と、感じにくい方

ここまでの内容を踏まえると、変化を感じやすい方の傾向は見えてきます。ただし、これはあくまで傾向であり、事前の予測とは異なります。
当てはまるからといって変化が出るとは限らず、当てはまらなくても感じ方が変わる方はいらっしゃいます。
ここでは感じやすい方と感じにくい方の特徴を挙げます。そのうえで、抜歯前後の写真を比べるときの注意点にも触れます。判断材料が写真しかない場合、見落としやすい条件があるためです。
変化を感じやすいと考えられる方
智歯周囲炎を繰り返し、頬まわりの腫れが慢性的に続いていた方は変化を感じやすい傾向があります。横向きや斜めに生えていて、歯ぐきが盛り上がっていた方も同様です。片側で噛む習慣があり、その側に親知らずのトラブルがあった方も含まれます。
痛みを避けるために反対側でばかり噛んでいた場合、噛み方が戻ることで左右のバランスが変わることもあります。いずれも、抜歯前の状態が本来の輪郭からずれていたケースにあたります。
変化を感じにくいと考えられる方
まっすぐ生えていて、痛みや腫れが一度もなかった親知らずの場合は変化が出にくいところです。骨の中に完全に埋まっていて、歯ぐきに影響がなかった場合も同様です。
上の親知らずだけを抜いた場合も、頬の輪郭への影響は限られます。エラの張りが骨の形によるものであれば、抜歯で変わる部分はほとんどありません。
この場合、見た目の変化を期待して抜歯を受けることはお勧めしません。抜歯の必要性は、あくまで炎症や虫歯の有無から判断していくことになります。
抜歯前後の写真を比べるときに気をつけたいこと
ビフォーアフターの写真を見ると、変化が大きく見えることがあります。ただし、顔の撮影は角度、距離、光の当たり方で印象が大きく変わります。
顎を引くか上げるかだけでも、輪郭の見え方は変わります。医療の現場で規格化された条件で撮影するのは、この差をなくすためです。
もうひとつ気をつけたいのは、抜歯前の写真がいつ撮られたかという点です。腫れている時期の写真を基準にすると、その後の変化は腫れが引いた分を含むことになります。当院では口腔内カメラで治療前後の記録を残し、同じ条件で比べられるようにしています。
小顔とは別に、口元の印象は歯科治療で変えられることがあります

ここまで、親知らずの抜歯と輪郭の関係についてお伝えしてきました。輪郭そのものを変えることは難しい一方で、口元の印象については話が変わってきます。口元の突出感は歯の位置や傾きに関わるため、歯科治療で対応できる範囲があるためです。
「小顔になりたい」というより「口元を少し下げたい」という気持ちに近い方もいらっしゃいます。その場合は、こちらのほうが目的に合うかもしれません。ここでは歯列矯正でできることを見ていきます。
口元の突出感は歯の傾きと位置に左右されます
横から見たときの口元の印象は、前歯の傾きと前後の位置に大きく関わります。前歯が前方に傾いていると、唇が押し出されて口元が前に出て見えます。鼻先と顎先を結んだ線に対して、唇がどの位置にあるかを目安にすることもあります。これは骨格だけで決まるものではなく、歯の並び方が関わる部分です。
歯の位置は骨の形と違い、矯正治療によって動かすことができます。ここが輪郭の話との大きな違いです。骨は変えられなくても、その上に並ぶ歯の位置は変えられる余地があるということです。
歯列矯正で口元の印象を整えられる場合があります
前歯の傾きや位置を整えることで、唇の突出感が変わることがあります。どの程度変えられるかは、骨格と歯の状態によって異なります。歯の傾きによる突出であれば動かせる余地がありますが、骨格そのものが前方にある場合は範囲が限られます。すべての方に同じ結果が出るわけではないため、検査による診断が前提となります。
当院では成人の矯正治療にも対応しており、噛み合わせを整えることを土台に治療計画を立てています。日本矯正歯科学会の認定医が診断に関わる体制を整えています。
抜歯を伴う矯正で口元を下げられることがあります
歯を並べるためのスペースが足りない場合、小臼歯の抜歯を含めた計画を検討することがあります。できたスペースを使って前歯を後方へ動かすと、口元の突出感が変わる場合があります。
ただし、抜歯が必要かどうかは症例によって異なります。歯を抜かずに並べられるケースもあります。骨格の状態によっては、矯正治療だけでは目標に届かないこともあります。その場合は、どこまでなら変えられるかを検査の結果に基づいてご説明します。
マウスピース型矯正装置という選択肢
透明なマウスピース型矯正装置を用いる方法もあります。取り外しができるため、食事や歯みがきのときの負担が少ない点が特徴です。当院では口腔内光学3Dスキャナーを用いて、型取りの負担を抑えた検査を行っています。
一方で、装着時間を守ることが結果に関わる装置でもあります。「今日はいいか」と装置を着けない日を作ってしまうと、計画どおりに進みにくくなります。毎日の流れの中に装着を組み込めるかどうかも、一緒に考えていきます。
親知らずの抜歯と矯正のための抜歯は目的が異なります
同じ抜歯という言葉でも、目的はまったく違います。親知らずの抜歯は、炎症や虫歯といったトラブルへの対応が中心です。矯正のための抜歯は、歯を動かすスペースをつくることが目的です。抜く歯の位置も、親知らずと小臼歯では異なります。
「親知らずを抜けば口元が下がる」という関係にはならない点にご注意ください。口元の印象を変えたい場合は、矯正治療の相談として進めていくことになります。
口元の印象や歯並びについて詳しく知りたい方は、以下のページもあわせてご覧ください。
親知らずの抜歯と顔の左右差の関係

片側だけ親知らずを抜くと顔が歪むのではないか、と心配される方がいらっしゃいます。この不安は珍しいものではありません。ここでは、顔の左右差そのものの捉え方から確認していきます。
そのうえで、片側だけ抜いたときに左右差を感じやすい時期についてもお伝えします。時期が分かると、必要以上に心配せずに経過を見ていただけます。左右差が目立つ時期と、落ち着いてくる時期には差があるためです。
顔の左右差は多くの方に見られます
顎顔面領域の患者1,460名を対象とした調査があります。この調査では、臨床的に明らかな顔面の非対称が34パーセントに認められたと報告されています。左右差があること自体は、決して特別な状態ではありません。
左右差の原因は、下顎骨の成長の差や噛み方の習慣など複数にわたります。頬づえや寝る向きの偏りが関わることもあるとされています。成長の過程でできた差が、そのまま残っている場合もあります。
親知らずの抜歯だけで説明できるものではないと考えられています。片側だけ抜いたことが原因かどうかも、それだけでは判断できません。
片側だけ抜いたときに左右差を感じやすい時期
抜歯後の腫れは、処置を受けた側にだけ生じます。そのため、術後の数日から1週間ほどは左右差がもっとも目立つ時期になります。腫れが引くにつれて、この差は縮まっていきます。
この期間は痛みを避けて反対側で噛むことになり、それも一時的な違和感につながります。もう片方の抜歯を予定している場合は、片側が落ち着いてから次に進むことが一般的です。
腫れによる左右差と骨格の左右差は別のものです
術後の一時的な腫れによる差と、もともとある骨格の左右差は分けて考えます。腫れが引いたあとにも差が残る場合、それは以前からあった左右差である可能性があります。抜歯をきっかけに鏡をよく見るようになり、気づいたというケースもあります。
「抜歯のせいで歪んだのか」と気になる場合は、そのままにせずご相談ください。抜歯前の記録があれば、比較して確認することができます。
見た目だけを目的とした親知らずの抜歯を勧めていない理由

ここまでの内容を踏まえたうえで、見た目を目的とした抜歯についての考え方をお伝えします。理由は大きく2つあります。ひとつは診療ガイドラインの考え方、もうひとつは抜歯に伴うリスクです。この2つを知っていただいたうえで判断していただくことが大切だと考えています。
そのうえで、医学的に抜歯が必要と判断される場合についても触れます。抜歯を避けるべき場合と、進めたほうがよい場合の両方があるためです。
病変のない親知らずの予防的な抜歯は推奨されていません
英国の国立医療技術評価機構が公表している技術評価ガイダンスがあります。そこでは、病変のない埋伏智歯の予防的な抜歯を推奨しない方針が示されています。抜歯の対象は、虫歯や炎症、嚢胞といった病変が確認された場合に限るという内容です。
またCochraneのシステマティックレビューでも、同じ論点が扱われています。無症状で病変のない親知らずについては、抜歯と保存を比較した質の高いエビデンスが不足していると報告されています。
同レビューでは、患者さまの価値観を踏まえた共同の意思決定が必要とされています。残す判断をした場合は、定期的な確認を続けることが望ましいとも示されています。
抜歯には合併症のリスクがあります

下顎の親知らずの抜歯は、歯ぐきを切開して骨を削ることもある外科処置です。多くの方は問題なく回復しますが、合併症が起こる可能性はあります。年齢が上がるほど術後の負担が大きくなるという指摘もあります。
どのようなリスクがあるのかを知ったうえで判断していただくことが大切です。代表的なものを次に挙げます。
下歯槽神経の知覚の異常
下顎の骨の中には、下唇やあごの感覚を伝える下歯槽神経が通っています。親知らずの根がこの神経に近い場合、抜歯によって知覚の異常が生じることがあります。
26,427名、44,171歯を対象としたシステマティックレビューがあります。そこでは一過性の知覚異常が1.20パーセントと報告されています。永続的な知覚異常は0.28パーセントでした。歯根と下顎管が近接している場合にリスクが高まることも示されています。
ドライソケットや感染、口が開きにくくなる状態
抜歯した穴に血の塊がうまくできないと、骨が露出して強い痛みが続くことがあります。この状態はドライソケットと呼ばれます。傷口の感染や、口が開きにくくなる開口障害が起こることもあります。喫煙や、傷口を強くうがいすることが影響する場合もあります。
多くは経過とともに改善しますが、症状が長引く場合は早めにご相談ください。当院では世界基準の滅菌器を用いた衛生管理のもとで処置を行っています。
一方で、医学的に抜歯が必要と判断される場合があります
智歯周囲炎を繰り返している場合は、抜歯を検討する対象になります。一度腫れた方は再発しやすいため、炎症が落ち着いている時期の処置が勧められます。手前の第二大臼歯が虫歯や歯周病になっている場合も同様です。
Cochraneのレビューでも、病変のない親知らずを残した場合に隣の歯の歯周炎リスクが高まる可能性が示唆されています。嚢胞などの病変が画像で見つかった場合も抜歯の対象です。
一方で、正常に生えて機能している場合は残す選択もあります。奥歯を失ったときのブリッジの土台として使える場合も同様です。当院では、できるだけ削らず抜かない方針を基本としたうえで、必要性を検討しています。
親知らずの抜歯や口腔外科の処置については、以下のページで詳しくご案内しています。
抜歯後の経過と、歯科医院で確認していること

実際に抜歯を受ける場合、顔の変化がいつ落ち着くのかは気になるところです。ここでは腫れの経過の目安をお伝えします。あわせて、歯科医院側が抜歯前に何を確認しているのかについても説明します。
最後に、ご自分では判断が難しい部分についてもお伝えします。抜歯を受けるかどうかを考えるうえで、判断の材料になる内容です。
術後2日から1か月までの経過の目安
術後の腫れは、48時間から72時間ごろにもっとも強くなることが多いとされています。この時期を過ぎると、腫れは徐々に引き始めます。前向き研究では、術後48時間と7日目に腫れと開口量の測定が行われています。1週間ほどで日常生活に支障のない状態まで戻る方が多いところです。
歯ぐきと骨の治りが進むのは、その後の1か月から数か月にかけてです。抜歯した部分の骨の変化も、最初の3か月に多く進みます。回復の早さには個人差があるため、目安としてお考えください。腫れが強い時期に鏡を見て一喜一憂せず、1か月ほど経ってから見比べるほうが実際に近くなります。
レントゲンと歯科用CTで確認していること
抜歯の前には、パノラマX線写真で親知らずの位置と生え方を確認します。歯の根と下顎管が重なって見える場合には、さらに詳しい検査が必要になります。当院では歯科用3DデジタルCTを備えており、顎の骨の厚み、歯根の形状、神経の位置まで立体的に把握できます。位置関係を事前に把握しておくことが、安全な処置につながります。
痛みへの配慮として、表面麻酔や極細の注射針を用いた麻酔も行っています。
検査に使用している機器については、以下のページでご紹介しています。
自分では判断が難しい理由
エラの張りが骨によるものか筋肉によるものか、鏡を見ただけでは分かりません。顔の左右差の原因が抜歯なのか、もともとの骨格なのかも同様です。親知らずを抜いたほうがよいかどうかも、画像を見なければ判断できません。
この記事に挙げた特徴に当てはまらない場合でも、気になる症状があれば受診をお勧めします。痛みや腫れが出ていなくても、画像で初めて分かる変化が見つかることがあります。
見た目についての希望も、診察の場で遠慮なくお話しください。当院には個室のカウンセリングルームがあり、周囲を気にせずご相談いただけます。診断と切り離して、どこまで対応できるかをご説明いたします。
親知らずの周りの虫歯が気になる場合は、以下のページもご覧ください。
まとめ:親知らずを抜くと小顔になるのかを正しく理解するために

親知らずを抜くと小顔になるのかという問いには、可能性としては考えられる、というのが実際のところです。顎の骨格そのものが変わるわけではありません。それでも、炎症による腫れが引いたり、噛む筋肉の働きが一時的に変わったりすることで、見え方が変わる方はいらっしゃいます。
ただし、どなたにどの程度の変化が出るかを事前に断言することはできません。エラの張りが骨によるものか筋肉によるものかも、ご自分では分けられない部分です。
一方で、口元の突出感については歯列矯正で整えられる場合があります。小顔とは別の目的として、検討する余地があるところです。見た目だけを目的とした抜歯はお勧めしませんが、炎症を繰り返している親知らずは早めの対応が望ましい状態です。
京都府京都市右京区、西院駅から徒歩4分の京都西院 ライフ歯科・矯正歯科・小児歯科では、親知らずの抜歯において、歯科用CTで神経との位置関係まで確認したうえで、できるだけ削らず抜かない方針を基本に必要性を見極めています。親知らずの痛みや腫れ、顔の輪郭や口元の見た目でお困りの方は、まずはお気軽にご相談ください。
※マウスピースには厚生労働省の認可を受けた材料を使用しています。ただしインビザラインは完成物として薬機法の対象外となる矯正歯科装置のため、医薬品副作用被害救済制度の対象とならない場合があります。
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