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舌の付け根に口内炎ができる原因|部位ごとの特徴と受診の目安を解説

舌の付け根に口内炎ができる原因|部位ごとの特徴と受診の目安を解説

こんにちは。京都府京都市右京区、西院駅から徒歩4分の京都西院歯医者 ライフ歯科・矯正歯科・小児歯科です。

舌の付け根に口内炎のようなものができて、飲み込むたびに痛む。鏡で確かめようとしても奥まで見えず、大きさも色も分からない。そうした状態は、強い不安につながりやすいものです。

実は「舌の付け根」という言葉が指す場所は、患者さまによって三か所に分かれます。場所が変われば、考えられる原因も、相談すべき診療科も変わります。

この記事では、舌の付け根に口内炎ができる原因を部位ごとに分けて解説します。あわせて、受診を考える目安、痛みへの対処法、繰り返さないための考え方までお伝えします。

なお、この記事は受診を判断するための材料としてお読みください。書かれた特徴に当てはまらない場合でも、症状が続くときや不安が残るときは、歯科・口腔外科や耳鼻咽喉科でご確認いただくことをおすすめします。

舌の付け根の口内炎とは|「付け根」が指す3つの部位

舌の付け根の口内炎とは|「付け根」が指す3つの部位

「舌の付け根が痛い」と伝えていただいたとき、私たちはまずその場所を確かめます。同じ言葉でも、指している場所が患者さまごとに違うからです。

舌の裏側の根元を指す方もいれば、奥歯に当たる舌の縁を指す方もいます。さらに奥の、のどに近い領域を指す方もいらっしゃいます。

ここでは、その三か所がどこにあるのかをお伝えします。あわせて、付け根の症状が気づきにくい理由と、この場所に口内炎ができやすい粘膜の性質について詳しく解説します。

舌の付け根と呼ばれる3つの領域

舌は前方の三分の二と後方の三分の一に分かれます。前方は舌体、後方は舌根と呼ばれます。その境目には有郭乳頭という粒状の突起が、V字を描いて並んでいます。

患者さまが「付け根」と表現される場所は、大きく分けると三つです。舌の裏側の根元にあたる舌下面と舌小帯のまわり、奥歯と接する舌の後方側面、そして有郭乳頭より奥の舌根部です。

「自分の痛みはどのあたりだろう」と思い浮かべながら、次の三つをご覧ください。ご自身の位置が分かると、この後の原因の説明がぐっと読みやすくなります。

舌下面・舌小帯のまわり(鏡で見えにくい第一の場所)

舌を持ち上げたときに見える裏側の根元です。中央に舌小帯という一本のスジが走り、その両脇には采状ヒダというひだ状の粘膜があります。

この部分の粘膜は薄く、食事や会話のたびに動きます。そのためアフタ性口内炎ができやすく、白い潰瘍として現れることの多い場所です。

鏡の前で舌を大きく持ち上げれば、ご自身でも確認できる範囲に入ります。三か所のなかでは最も見やすい場所といえます。

舌の後方側面(奥歯や親知らずが当たる場所)

舌の縁のうち、下の奥歯や親知らずと接している部分です。舌は話すときも飲み込むときも動き続けるため、歯の当たる場所には刺激が繰り返し加わります。

傾いて生えた親知らずや、欠けた詰め物の鋭くなった縁があると、同じ場所に傷ができます。「またここにできた」という繰り返しは、この領域で特に起こりやすい現象です。

言い換えると、歯科で原因そのものを取り除ける可能性がある場所です。この点は、後であらためて詳しくお伝えします。

舌根部(有郭乳頭より奥、のどに近い領域)

有郭乳頭より奥の領域です。舌の一部でありながら、解剖学的には中咽頭という「のど」の入り口に含まれます。

ここには舌扁桃というリンパ組織が並んでいます。痛みの感じ方も、起こりうる病気の種類も、口の中とは性質が異なります。

そしてこの領域は、歯科の視診では見えません。舌根部が中心の症状は、耳鼻咽喉科が専門となる点をここで押さえておいてください。

舌の付け根の口内炎が気づきにくく、不安になりやすい理由

舌の付け根やその周辺にできた場合、ご自身で確認することは難しいと指摘されています。飲食物を飲み込んだときに喉の痛みを感じて、初めて気づく方もいらっしゃいます。

見えないと、大きさが変わっているのか、色はどうなのかを確かめられません。「見えないから怖い」という気持ちは、とても自然なものです。

その不安を、自己判断で無理に打ち消す必要はありません。確認の手順と受診の目安は、この記事の後半で具体的にお伝えします。

舌の付け根の粘膜は、もともと口内炎ができやすい性質を持っています

口の中の粘膜は、硬くなっている部分と、やわらかいままの部分に分かれます。歯ぐきや上あごは硬く、頬の内側や舌の裏側はやわらかい粘膜です。

アフタ性口内炎は、このやわらかい非角化粘膜に生じやすいと報告されています。小さなアフタは頬粘膜、口唇粘膜、口腔底に多く、10日から14日ほどで治癒するとされています。

舌下面や舌の縁は、まさにこのやわらかい粘膜にあたります。舌の付け根に口内炎が繰り返しできるのは、偶然ではなく粘膜の性質によるものといえます。

舌の付け根に口内炎ができる主な原因

舌の付け根に口内炎ができる主な原因

舌の付け根に口内炎ができる原因は、ひとつではありません。体調による免疫の変化、栄養素の不足、歯や被せ物による刺激、乾燥、ウイルスや真菌の関与などが挙げられます。

大切なのは、ご自身の状態がどれに近いかを知ることです。原因が違えば、必要な対処も変わってくるからです。

ここからは、頻度の高いものから順に解説します。それぞれについて、なぜ舌の付け根に出やすいのかまで含めて詳しくお伝えします。

アフタ性口内炎(最も多い原因)

舌の付け根にできる口内炎のうち、最も多いものです。白または灰色の膜に覆われ、縁が赤く縁取られた円形または楕円形の潰瘍として現れます。

大きさの割に痛みが強いことが特徴です。有病率は人口の5パーセントから25パーセントと報告されており、10代に発症のピークがあるとされています。

多くは1週間から2週間ほどで自然に治ります。まずはこの前提を知っておいていただくと、気持ちが少し楽になります。

免疫の反応と体質が関わる仕組み

発症の仕組みは、単一の原因では説明されていません。素因のある方に何らかの引き金が加わり、免疫の反応が起きると考えられています。

粘膜の破壊はT細胞を介した免疫反応によって進み、TNF-アルファという炎症の伝達役が働くと報告されています。それによって細胞傷害性T細胞が上皮を壊すという流れです。

家族内で同じ症状を持つ方が多いことも報告されており、体質の関与が推測されています。ご自身の不注意が原因ではない、という点はお伝えしておきたいところです。

疲労・ストレス・睡眠不足が引き金になるとき

局所の傷、ストレス、貧血、造血に関わる栄養素の不足などが、発症との関連を指摘されています。仕事が立て込んだ時期に決まってできる、という実感には理由があります。

疲労やストレスが影響する範囲は、口内炎だけにとどまりません。歯ぐきの腫れや出血として現れることもあります。

疲れやストレスによるお口の変化についてより詳しくは以下をご覧ください。

>>[疲れやストレスで歯茎が腫れる原因と対処法]

鉄・葉酸・ビタミンB12・亜鉛の不足

何度も繰り返す場合、背景に栄養素の不足が隠れていることがあります。「食生活の乱れ」という言葉で終わらせず、どの成分が関わるのかを知っておくと対処が変わります。

ここで挙げるのは、鉄、葉酸、ビタミンB12、そして亜鉛です。いずれも血液検査で状態を確かめられる成分です。

自己判断でサプリメントを増やすのではなく、まず数値を知ることが出発点になります。次に、報告されている数値と国内の基準を見ていきます。

血液学的な不足と、繰り返す口内炎の関連

複数の研究をまとめたメタ解析では、繰り返すアフタ性潰瘍の群で栄養素の不足が有意に多いと報告されています。ビタミンB12でオッズ比3.75、葉酸で7.55という数値が示されています。

同じ報告では、これらの不足を調べて対処することが再発の予防に役立つ可能性が指摘されています。あくまで関連の報告であり、すべての方に当てはまるものではありません。

それでも、年に何度も繰り返す方にとっては確かめる価値のある項目です。内科での血液検査が手がかりになります。

亜鉛不足と口内炎(国内の診療指針での位置づけ)

国内の診療指針では、亜鉛欠乏症の症状として皮膚炎、口内炎、味覚異常などが挙げられています。血清亜鉛値が60マイクログラム毎デシリットル未満で亜鉛欠乏症とされています。

60から80マイクログラム毎デシリットル未満は潜在性亜鉛欠乏とされ、測定は早朝の空腹時が望ましいとされています。味覚の変化を伴う場合は、特に確かめておきたい項目です。

ただし同じ指針では、症状がない場合に亜鉛を補充する対象にはならないとされています。市販のサプリメントで自己判断せず、医療機関にご相談ください。

歯や被せ物による慢性的な機械的刺激

「いつも同じ場所にできる」という場合、原因は体調ではなく歯の側にあることがあります。舌の後方側面は下の奥歯や親知らずと接するため、この状況が起こりやすい場所です。

傾いて生えた親知らず、欠けた詰め物の鋭い縁、被せ物のわずかな段差。こうした刺激が続くかぎり、薬で一時的に治っても同じ場所に再びできてしまいます。

当院には日本口腔外科学会の認定医が在籍しています。レントゲンや歯科用CTで親知らずの向きと位置を確認したうえで、対応を判断しています。

>>当院の口腔外科についてはこちら

親知らず・傾いた奥歯・尖った歯が当たっているとき

横向きや斜めに生えた親知らずは、歯ぐきから一部だけ顔を出していることがあります。その縁が舌の後方に当たり続けると、傷が治りきらないまま経過します。

この状態では、口内炎の薬だけで解決することは難しくなります。当たっている歯の形を整える、あるいは親知らずそのものへの対応を検討することになります。

他院で難しいと言われた親知らずのご相談も受け付けています。まずは何が当たっているのかを確認するところから始めます。

口腔乾燥(ドライマウス)と口の中の不衛生

唾液には、粘膜を潤し、細菌を洗い流す働きがあります。唾液が減ると粘膜が傷つきやすくなり、できた傷も治りにくくなります。

口呼吸の習慣、加齢による変化、服用中のお薬、就寝中の口の開きなどが、乾燥の背景として挙げられます。舌の付け根はもともと唾液が届きにくく、乾燥の影響を受けやすい場所です。

当院では唾液検査により、唾液の量や性質を数値として確かめることができます。「乾いている気がする」という感覚を、確かめられる形にしていきます。

歯みがき剤に含まれるラウリル硫酸ナトリウム

見落とされやすい要因として、毎日使う歯みがき剤の成分があります。ラウリル硫酸ナトリウムは泡立ちをよくする発泡剤として、多くの製品に配合されています。

4件の二重盲検ランダム化比較試験をまとめたシステマティックレビューがあります。この成分を含まない歯みがき剤を使った場合、潰瘍の数と持続期間が減ったと報告されています。発生回数と痛みについても、有意に減少したとされています。

同じレビューでは、繰り返す方がこの成分を含まない製品を選ぶ利点の可能性が示されています。一方で、さらに設計の良い試験が必要とも述べられています。試してみる選択肢のひとつとしてお考えください。

ウイルスや真菌が原因になる場合

アフタ性以外の口内炎もあります。とくに舌の付け根やのどに近い部分では、ウイルスや真菌が関わるものが問題になりやすくなります。

種類を並べるだけでは実感につながりにくいため、ここでは「どこに出やすいか」という視点でお伝えします。発熱を伴うかどうかも、重要な手がかりです。

以下では、のどに近い部分に出やすい三つの状態について詳しく解説します。

ヘルパンギーナ・手足口病(のどに近い部分に出ます)

ヘルパンギーナは、コクサッキーウイルスA群などによる発熱を伴う病気です。後方の中咽頭粘膜に水疱と潰瘍が生じると報告されています。

病変は口蓋扁桃の前方の柱に最も多く、軟口蓋、扁桃、口蓋垂、舌にも現れ、1日から7日で治癒するとされています。舌の付け根の痛みとして自覚されることがあります。

発熱、のどの痛み、飲み込みにくさを伴う場合は、この可能性を考えます。お子さまに多い病気ですが、大人にも起こります。

ヘルペス性口内炎との出方の違い

見分ける手がかりのひとつが、出る場所です。単純ヘルペスによる感染は口の周囲と前方に、ヘルパンギーナや手足口病は後方に病変が出ると考えられています。

ヘルペス性歯肉口内炎では、歯ぐきや前方の舌、頬の内側に小さな水疱ができ、それが破れて潰瘍になります。歯ぐきの腫れや出血を伴うこともあります。

簡単にまとめると、前が中心か、奥が中心かという違いです。ただし例外もあるため、これだけで判断はできません。

カンジダによる正中菱形舌炎(付け根の中央にできる赤い部分)

舌の付け根の中央に、赤くつるりとした部分ができることがあります。正中菱形舌炎と呼ばれ、有郭乳頭のすぐ前方に、境界のはっきりした左右対称の脱乳頭領域として現れます。

喫煙、義歯の使用、吸入ステロイド薬の使用などが素因として挙げられ、多くは慢性の萎縮性カンジダ症と考えられています。造血に関わる栄養素の不足や糖尿病を除外する必要があるとされています。

痛みを伴わないことも多い状態です。「痛くないのに赤い部分が消えない」という場合は、一度ご確認ください。

全身の病気が背景にあることもあります

頻度としては多くありませんが、全身の病気の一症状として口内炎が現れることがあります。代表的なものがベーチェット病です。

口腔潰瘍はベーチェット病の患者さまの97パーセントから99パーセントに生じ、最初の症状となることが多いと報告されています。国際的な診断基準では、1年に3回以上繰り返す口腔潰瘍に加え、他の項目を2つ満たすことが求められます。

目の症状、皮膚の症状、外陰部の潰瘍などが同時期にある場合は、医科での確認が必要になります。口の中だけを見ていても分からない病気があるという点を、頭の片隅に置いていただければ十分です。

口内炎に見えて口内炎ではない場合|自分では判断が難しい理由

口内炎に見えて口内炎ではない場合|自分では判断が難しい理由

まずお伝えしたいことが二つあります。ひとつは、舌の付け根にできるもののほとんどは口内炎であり、多くは自然に治るということです。

もうひとつは、見た目や痛みの有無だけで、ご自身で判断することはできないということです。このパートの目的は不安を強めることではなく、受診するかどうかを決める材料をお渡しすることにあります。

少しでも気になる点があるときは、当てはまる特徴があるかどうかにかかわらずご確認ください。以下では、口内炎と間違えられやすい状態について詳しく解説します。

粘液嚢胞(舌の裏側にできるやわらかい膨らみ)

唾液の通り道が妨げられ、袋状に唾液がたまってできる膨らみです。舌の裏側や舌小帯のまわりにできることがあり、透明感のあるやわらかい隆起として現れます。

口内炎のように中央がへこまないことが多いとされています。ただし見た目の似た状態もあるため、これだけで区別できるものではありません。

自然に小さくなることもありますが、同じ場所で膨らみと破れを繰り返す場合は処置の対象になります。気になる膨らみが続くときはご相談ください。

舌扁桃の炎症や肥大(のどの違和感が主な症状)

舌扁桃は、有郭乳頭から喉頭蓋の付け根にかけて並ぶ30個から100個のリンパ組織の集まりです。免疫の働きを担う組織で、もともと誰にでもあります。

これが大きくなると、のどの不快感、何かが引っかかる感じ、飲み込みにくさが生じるとされています。肥大には肥満、睡眠時無呼吸、逆流、若い年齢、アレルギー性鼻炎、喫煙との関連が指摘されています。

診断には柔軟な内視鏡による観察が用いられます。歯科の視診では見えない領域のため、のどの違和感が中心の場合は耳鼻咽喉科での確認が適しています。

白板症・紅板症(白い部分や赤い部分が続くとき)

こすっても取れない白い部分や、赤みの続く部分が生じることがあります。白板症、紅板症と呼ばれ、経過観察や検査の対象となる粘膜の変化です。

ここで強くお伝えしたいのは、痛みが乏しいことが多いという点です。「痛くないから大丈夫」とは考えないでいただきたい状態です。

英国のガイドラインでは、赤い部分、あるいは赤と白が混ざった部分が口の中にある場合、歯科医師による評価が推奨されています。国内でも同様に、確認しておくべき変化として扱われています。

舌がん・中咽頭がんについて知っておいていただきたいこと

不安の中心にあるのは、この話題だと思います。まず頻度からお伝えします。

2023年に国内で口腔・咽頭がんと診断されたのは23,771例で、そのうち舌がんは5,318例と報告されています。口内炎を経験する方の数と比べれば、限られた頻度といえます。

ただし、だからこそお伝えしたいことがあります。確率でご自身を安心させるのではなく、続く症状は確認してもらうという姿勢が大切です。以下で、受診の判断につながる点を詳しく解説します。

同じ「付け根」でも、部位によって扱う診療科が変わります

口腔がんのなかで舌は最も頻度が高い部位とされ、舌の縁に生じることが比較的多いと報告されています。この領域は歯科・口腔外科が扱います。

一方、中咽頭がんは扁桃、舌の付け根と後方三分の一、軟口蓋、咽頭壁のがんと分類されています。喫煙や飲酒に加え、ヒトパピローマウイルスの関与も指摘されています。

つまり、前方寄りか舌根部かで担当する診療科が変わります。

飲み込むときの痛み・耳の痛み・首のしこりが続くとき

舌根部の腫瘍では、飲み込みにくさ、飲み込むときの痛み、異物感、耳に響く痛み、首のしこりが症状として挙げられています。症状が漠然としているために、受診が遅れる場合があると指摘されています。

ただし、これらは扁桃炎やウイルス性の炎症など、はるかに多い原因でも起こる症状です。症状があること自体を、過度に心配していただく必要はありません。

お伝えしたいのは、2週間以上続く場合は原因を確かめておいてほしいということです。症状の有無だけで病名を推測することは避けてください。

口内炎との違いとして報告されている傾向

治りにくい、硬く触れる、境界がはっきりしない、痛みが乏しいといった傾向が報告されています。参考として知っておく分には役に立ちます。

ただしこれらはあくまで傾向であり、当てはまらない場合もあります。「痛みがあるから違う」「小さいから違う」とお考えになって受診を見送ることは、避けていただきたいところです。

また、確かめようとして強く押したり、こすったりしないでください。粘膜を傷つけると、かえって状態が分かりにくくなります。

合わない被せ物や尖った歯を放置しないほうがよい理由

口の中の粘膜への慢性的な刺激と、口腔扁平上皮がんとの関連を検討したシステマティックレビューでは、両者に有意な関連が示されています。同じ報告では、独立した危険因子というよりも補助的な因子である可能性が指摘されています。

刺激そのものががんを起こすという単純な話ではありません。ただ、刺激が続くと傷が治らず、粘膜の変化に気づきにくくなります。

当院では、粘膜の状態と、原因になりうる歯の状態の両方を確認しています。なお、組織を採って確定診断を行う検査は、専門的な設備を備えた医療機関で実施されるのが一般的な流れです。

当てはまる特徴がなくても、不安が残るときは確認を受けてください

ここまで挙げた特徴に当てはまらない場合でも、不安が残るなら診てもらう価値があります。「思い過ごしだった」と分かること自体が、大きな安心につながります。

この記事を読んで、ご自身で可能性を打ち消してしまうことのないようお願いいたします。歯科・口腔外科でも耳鼻咽喉科でも、まずご相談いただければ適切な確認につながります。

>>ご相談・お問い合わせはこちら

舌の付け根の口内炎で受診する目安と、何科を受診すればよいか

舌の付け根の口内炎で受診する目安と、何科を受診すればよいか

「もう少し様子を見てよいのか、今日にでも行くべきなのか」。判断に迷う場面は多いと思います。

ここでは、日数の目安をはっきりとお示しします。あわせて、歯科・口腔外科と耳鼻咽喉科をどう使い分けるかをお伝えします。

最後に、受診前にご自身で確認できることと、受診時に伝えると役立つ情報について詳しく解説します。

2週間と3週間|2つの目安があります

国内の歯科・口腔外科では、2週間以上治らない場合の受診が一般的に案内されています。当院も同じ考え方で対応しています。

英国のガイドラインでは、別の目安が示されています。原因の説明がつかない口の中の潰瘍が3週間を超えて続く場合、あるいは首に原因不明のしこりが続く場合です。この場合、専門的な検査への紹介を検討することが推奨されています。

ここで誤解のないようお伝えします。この日数は「それまでは待つべき期間」ではありません。「これを超えたら必ず確認する期限」としてお考えください。

痛みが強いとき、大きくなっていくとき、不安が大きいときは、日数を待たずにご相談いただいて構いません。

歯科・口腔外科と耳鼻咽喉科の使い分け

最初にご説明した舌の付け根の三つの領域と対応させると分かりやすくなります。舌下面や舌小帯のまわり、そして奥歯に当たる舌の後方側面は、歯科・口腔外科が担当します。

一方、のどの奥に近い舌根部の症状、飲み込みにくさや声の変化が中心の場合は、耳鼻咽喉科が専門となります。内視鏡での観察が必要になるためです。

「どちらか分からない」という場合は、まず通いやすい歯科で口の中を確認するという方法があります。当院には個室のカウンセリングルームが2部屋あり、落ち着いてお話を伺える環境を整えています。

受診前のセルフチェックと、伝えると役立つこと

先に目的をはっきりさせておきます。ここでお伝えするセルフチェックは、受診が必要かどうかを判断し、受診時に状況を伝えるための準備です。

病気の可能性をご自身で打ち消すためのものではありません。チェックで何も見つからなくても、症状が続くようであれば受診してください。

以下では、見えない部位をどう確認するか、そして何を伝えると診断につながりやすいかを具体的にお伝えします。

見えない部位をどう確認するか

明るい場所で、舌先を上あごにつけるように持ち上げます。舌の裏側と根元が見えたら、スマートフォンで撮影して日付とともに保存しておきます。

数日おきに同じ角度で撮ると、大きさの変化が分かります。指で強く押し込んだり、こすって確かめたりすることは避けてください。

舌根部はご自身では見えません。確認できないこと自体は異常ではありませんので、無理に奥を見ようとしないでください。

受診時に伝えると役立つ情報

いつから続いているか、大きさが変わっているか、痛みの強さがどう変化したかをお伝えください。発熱の有無も手がかりになります。

飲み込むときの痛み、耳への痛み、首のしこりの有無も重要です。繰り返す方は、この1年間でおおよそ何回できたかをお伝えいただけると助かります。

服用中のお薬や、最近始めたサプリメントの情報も役立ちます。撮影した写真がある場合は、そのままお持ちください。

舌の付け根の口内炎への対処とセルフケア

舌の付け根の口内炎への対処とセルフケア

痛みを抱えたまま食事や会話を続けるのはつらいものです。ここからは、治るまでの期間をできるだけ楽に過ごすための方法をお伝えします。

舌の付け根は、市販薬が使いにくい場所でもあります。その制約を踏まえたうえでの工夫が必要になります。

治療の基本的な考え方から、市販薬の扱い方、食事と生活の工夫、歯科医院で受けられる処置まで、順に詳しく解説します。

まず知っておきたい治療の考え方

口内炎の治療は、痛みを和らげ、治るまでの期間を短くし、再発の間隔を広げることを目的としています。特効薬で一気に治すという性質のものではありません。

全身に用いる薬について検討したコクランレビューがあります。25件の試験が対象となりましたが、いずれの介入についても、支持または否定するための十分な根拠は得られなかったと報告されています。

つまり、薬に大きく期待するよりも、原因への対処と口の中の環境づくりが軸になります。地味に思えるかもしれませんが、繰り返しを減らす近道です。

市販薬が使いにくい部位での工夫

貼るタイプの薬は、舌の付け根では留まりにくくなります。舌が動き続けるうえ、唾液に触れる時間も長いためです。

塗るタイプも、奥の方には指が届きにくいという難しさがあります。含むタイプのうがい薬や、届きやすい形状の製品を選ぶという考え方があります。

使用の際は添付文書に従ってください。症状が続く場合は自己判断で使い続けず、受診をご検討ください。なお抗生物質は細菌が原因の炎症に用いる薬であり、口内炎のすべてに当てはまるものではありません。

市販薬と抗生物質の使い分けについてより詳しくは以下をご覧ください。

>>[歯茎の腫れに市販の抗生物質は使えるのか]

食事と生活での具体的な工夫

熱いもの、辛いもの、酸味の強いものは、痛みが強い数日間だけでも控えてみてください。炭酸飲料や塩気の強い料理も、しみやすくなります。

やわらかく、常温に近いものが食べやすくなります。水分をこまめにとることで、口の中の乾燥も和らぎます。

ビタミンB群を含む食品を意識することも助けになります。ただし、サプリメントを自己判断で大量に飲むことはおすすめしません。亜鉛については、症状がない場合の補充は対象にならないとされています。

歯科医院で受けられる処置

当院には歯科用Er:YAGレーザーがあり、虫歯や歯周病の治療のほか、口内炎や外科的な処置にも活用しています。痛みが強く食事がつらいときの選択肢のひとつです。

もうひとつが、原因になっている歯への対応です。当たっている歯や詰め物の縁を、必要最小限だけ整えます。削りすぎない方針で対応しています。

麻酔が必要な処置では、表面麻酔剤や極細針を用い、麻酔液を温めるなどの配慮を行っています。痛みが苦手な方も、その旨をお伝えください。

>>当院の虫歯治療についてはこちら

繰り返す舌の付け根の口内炎を減らすために

繰り返す舌の付け根の口内炎を減らすために

「治ってもまたできる」という悩みは、多くの患者さまから伺います。年に何度も繰り返す状態は、生活の質にも影響します。

ここで必要になるのは、より強い薬ではありません。何が引き金になっているかを見つけることです。

原因の見つけ方、刺激源を作らない口の中づくり、そして生活習慣と栄養の見直しについて詳しく解説します。

まず原因を確かめるところから始めます

「自分の場合は何が引き金なのか」。それが歯の当たりなのか、栄養素の不足なのか、乾燥なのかによって、必要な対処は変わります。

当院ではMTMという考え方を採用しています。生活習慣や口の中の環境、唾液の量と性質、歯質などを検査し、リスクと原因を明らかにしたうえで予防のプログラムを立てる方法です。

思い当たる原因がないまま繰り返している方ほど、この確認が手がかりになります。

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刺激源を作らない口の中づくり

尖った歯、欠けた詰め物、当たり続けている親知らず。これらを放置しているかぎり、同じ場所に傷ができる状況は変わりません。

定期的に口の中を確認していれば、こうした刺激源を早い段階で見つけられます。痛みが出る前に対応できることも多くあります。

当院は担当歯科衛生士制をとっています。同じ担当者が継続して口の中を見ることで、些細な変化にも気づきやすい体制を整えています。

生活習慣と栄養の見直し

睡眠時間の確保は、実感としても報告としても関連が指摘されています。繰り返す方は、どの時期に集中してできるかを記録しておくと傾向が見えてきます。

造血に関わる栄養素の不足には、性別と年齢による違いがあると報告されています。血清フェリチンの不足は60歳未満の女性に多く、葉酸とビタミンB12の不足は21歳から40歳の男性に多いとされています。

極端な食事制限は、こうした不足につながることがあります。「体重を落としてから増えた気がする」という場合は、内科での血液検査もご検討ください。

お子さま・妊娠中の方の舌の付け根の口内炎で気をつけること

お子さま・妊娠中の方の舌の付け根の口内炎で気をつけること

お子さまと妊娠中の方では、注意すべき点が少し変わります。どちらも、無理をしないことが何より大切です。

お子さまの場合は、痛みで水分がとれなくなることに気をつけます。妊娠中の場合は、体の変化と重なりやすい時期であることを踏まえた対応が必要です。

それぞれについて、詳しく解説します。

お子さまの舌の付け根の口内炎で注意したいこと

ヘルパンギーナは10歳未満のお子さまに多く、3歳から5歳に発症の山があるとされています。夏から初秋にかけて、保育施設や学校で流行しやすい病気です。

最も気をつけたいのは、痛みで飲み込めなくなり、水分がとれなくなることです。この場合は小児科の受診が優先されます。

歯科では、器具や環境に慣れるところから段階的に進めています。女性歯科医師も在籍しており、待合室から見渡せるキッズルームもご用意しています。

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妊娠中に口内炎ができやすいと感じるとき

妊娠中はホルモンの変化に加え、つわりで歯みがきが難しくなる時期が重なります。食事の内容が偏りやすいことも影響します。

無理に歯ブラシを奥まで入れず、こまめなうがいで対応する方法があります。フッ素配合の洗口剤を使うという選択肢もあります。

歯科の受診は、妊娠中期の安定期が推奨されています。受診の際は母子手帳をご持参のうえ、産婦人科医からの注意事項があればお伝えください。

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舌の付け根の口内炎に関するよくあるご質問

最後に、患者さまから多くいただくご質問にお答えします。

見えない場所だからこそ、細かな疑問が生まれやすい部位です。ご自身の状況に近いものからご覧ください。

痛くない口内炎は、放置してもよいのでしょうか

痛みの有無は、様子を見てよいかどうかの判断材料にはなりません。白板症や正中菱形舌炎のように、痛みが乏しいまま経過する状態もあります。

痛くないからこそ気づきにくく、時間が経ってしまうこともあります。2週間以上変化がないときは、一度ご確認ください。

飲み込むと痛いのは、口内炎のせいでしょうか

舌の付け根の口内炎でも、飲み込むときに痛むことはあります。舌の動きに合わせて患部が引っ張られるためです。

ただし扁桃炎やヘルパンギーナなど、のどの病気でも同じ症状が起こります。発熱を伴う場合や、症状が2週間以上続く場合は受診をご検討ください。

片側だけにできるのは、なぜでしょうか

片側に偏る場合、その側の歯や被せ物が当たっている可能性があります。傾いた親知らずや、欠けた詰め物の縁が原因になっていることがあります。

毎回同じ側の同じ場所にできるという場合は、体調ではなく歯の状態を確認する段階です。歯科での確認をおすすめします。

複数同時にできるのは、どういう状態でしょうか

小さな潰瘍が多数できるタイプのアフタ性口内炎もあります。またウイルスによる口内炎では、複数の水疱や潰瘍が同時に生じることがあります。

発熱を伴う場合や、繰り返し多発する場合は、全身の状態が関わっていることもあります。年に何度も繰り返すときは、その旨をお伝えください。

耳が痛いのは、舌の付け根と関係があるのでしょうか

のどの奥や舌根部の炎症で、耳に響く痛みが起こることがあります。神経の通り道が近いため、痛みが耳に伝わるように感じられます。

扁桃炎などでもよく起こる症状ですので、それ自体を過度に心配する必要はありません。ただし、のどの痛みと耳の痛みが2週間以上続く場合は、耳鼻咽喉科でご確認ください。

何科を受診すればよいのでしょうか

舌の裏側や舌の縁など、口の中で見える範囲であれば歯科・口腔外科が適しています。歯や被せ物が当たっている可能性も含めて確認できます。

のどの奥の違和感、飲み込みにくさ、声の変化が中心の場合は耳鼻咽喉科が適しています。判断に迷う場合は、まず歯科でご相談いただいても構いません。

記事に書かれた特徴に当てはまらなければ、受診しなくてよいのでしょうか

そうではありません。特徴の有無だけで判断することは、歯科医師でも視診のみでは難しい場合があります。

2週間以上続く場合、大きさが変わる場合、そして不安が残る場合は、当てはまる特徴がなくてもご確認ください。何事もなかったと分かることも、受診の大切な成果です。

まとめ:舌の付け根の口内炎は、まず場所を確かめることから始まります

まとめ:舌の付け根の口内炎は、まず場所を確かめることから始まります

舌の付け根という言葉は、舌下面と舌小帯のまわり、奥歯に当たる後方側面、そしてのどに近い舌根部という三つの場所を指しています。場所によって原因も診療科も変わります。

多くはアフタ性口内炎で、1週間から2週間ほどで自然に治ります。同じ場所に繰り返す場合は、歯や被せ物の刺激という取り除ける原因が隠れていることがあります。また、鉄や葉酸、ビタミンB12、亜鉛の不足という、検査で確かめられる背景もあります。

この記事の内容は、受診を判断するための材料です。ご自身で病名を絞り込むためのものではありません。2週間を目安に治らないとき、大きさが変わるとき、飲み込むときや耳への痛みが続くときはご確認ください。当てはまる特徴がなくても、不安が残るなら診てもらってよいのです。

京都府京都市右京区、西院駅から徒歩4分の京都西院歯医者 ライフ歯科・矯正歯科・小児歯科では、口内炎をはじめとする口腔粘膜のお悩みにおいて、日本口腔外科学会の認定医が在籍し、歯科用CTやマイクロスコープを用いて粘膜と歯の状態の両方を確認しながら原因に向き合うという方針で取り組んでいます。舌の付け根の口内炎や、なかなか治らない口の中の痛みでお困りの方は、まずはお気軽にご相談ください。

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