2026.09.30
歯ぎしりを簡単に治す方法はあるのか|自分でできる対策と歯科医院での治療を解説

こんにちは。京都府京都市右京区、西院駅から徒歩4分の京都西院 ライフ歯科・矯正歯科・小児歯科です。
朝起きたときに顎がだるい、こめかみが疲れている、家族から寝ている間の音を指摘された。そうした経験から、歯ぎしりを簡単に治す方法を探している方は少なくありません。日中にふと気づくと歯を食いしばっていた、という方もいらっしゃいます。
歯ぎしりには、自分で取り組める部分と、歯科医院での対応が必要な部分があります。この二つを分けないまま対策だけを並べても、思うような変化につながらないことがあります。
この記事では、歯ぎしりを簡単に治す方法がどこまで期待できるのかを、研究で示されている内容とあわせて解説します。今日から始められるセルフケア、市販のマウスピースを使うときの注意点、歯科医院で行う対応まで順にご紹介します。
目次
歯ぎしりを簡単に治す方法を探している方へ、最初にお伝えしたいこと

歯ぎしりを簡単に治す方法を探すとき、多くの情報が原因と対策を並べて紹介しています。ただ、その前に知っておいていただきたい前提が二つあります。
一つは、歯ぎしりの捉え方が近年変わってきていることです。もう一つは、寝ている間と起きている間では、自分で対処できる範囲が大きく異なることです。
「自分の歯ぎしりは、意識すれば止められるものなのか」。この問いへの答えは、どちらの歯ぎしりなのかによって変わります。まずは歯ぎしりがどのような現象として捉えられているのかから確認していきます。
歯ぎしりは病気ではなく咀嚼筋の活動として捉えられています
歯ぎしりは、専門的にはブラキシズムと呼ばれます。Lobbezooらが2018年にJournal of Oral Rehabilitationで発表した国際コンセンサスでは、ブラキシズムは咀嚼筋の活動であり、それ自体は障害ではないと位置づけられました。咀嚼筋とは、噛むときに働く頬や側頭部の筋肉を指します。
つまり、歯ぎしりがあること自体は、健康な方にも一定の割合でみられる現象です。「自分はどこか悪いのだろうか」と過度に心配する必要はありません。
問題になるのは、その力が歯や顎の関節が耐えられる範囲を超えたときです。日本歯科医師会の資料でも、生理的な許容範囲を超えた場合に歯や歯周組織、顎関節に障害が生じうると説明されています。そのため目指すのは、歯ぎしりを完全になくすことではなく、害が出ない範囲に収めることになります。
寝ている間と起きている間では、自分で対処できる範囲が変わります

ブラキシズムは、睡眠中に起こるものと、起きている間に起こるものに分けられます。この二つは、原因の考え方も対処の方法も異なります。
日本歯科医師会の資料によると、睡眠時ブラキシズムがみられる割合は、成人でおよそ5〜8パーセント、小児では10〜20パーセント、高齢者では2〜3パーセントとされています。加齢とともに減少し、明らかな性差はないと報告されています。
一方、起きている間の食いしばりは、これとは別に生じます。Manfrediniらが2013年にJournal of Orofacial Painで発表した系統的レビューでも、両者は区別して扱われています。歯ぎしりを簡単に治すという観点で見たとき、この二つの違いが決定的になります。次で詳しく解説します。
睡眠中に起こる歯ぎしり(睡眠時ブラキシズム)
睡眠時ブラキシズムは、眠りの浅いノンレム睡眠のときに多く生じます。Katoらが2001年にJournal of Dental Researchで報告した研究では、睡眠中の微小覚醒と呼ばれる一過性の覚醒反応に続いて、律動的な咀嚼筋の活動が現れることが示されています。
微小覚醒は、本人が目を覚ましたと感じない短い脳の活動です。意識のない状態で生じているため、その瞬間に自分の意志で止めることはできません。ここが、自力での対処が難しい理由になります。
日中に無意識に起こる食いしばり(覚醒時ブラキシズム)
覚醒時ブラキシズムは、パソコン作業中や運転中、スマートフォンを見ているときなどに、上下の歯が触れ続けたり噛みしめたりする状態です。歯の接触癖と呼ばれることもあります。
本来、安静にしているときの上下の歯は触れていません。食事や会話の時間を合わせても、1日のうち歯が接触している時間はごくわずかとされています。
こちらは起きている間の出来事です。そのため、気づく仕組みをつくることで減らせる可能性があります。歯ぎしりを簡単に軽くする方法として現実的に取り組めるのは、主にこちらになります。
歯ぎしりのタイプと、簡単に確かめられるセルフチェック

歯ぎしりと聞くと、ギリギリという音を思い浮かべる方が多いかもしれません。ただ、歯ぎしりには音が出るものと出ないものがあります。
音が出ないタイプは家族にも気づかれません。そのため、歯科医院で歯のすり減りを指摘されて初めて知る方もいらっしゃいます。
自分に歯ぎしりがあるかどうかは、体に現れる変化から確かめられます。ここでは、まず歯ぎしりのタイプを確認し、続いて起床時と日中に分けたセルフチェックの方法を解説します。
歯ぎしりは大きく3つのタイプに分けられます
厚生労働省のe-ヘルスネットでは、ブラキシズムをグラインディング、クレンチング、タッピングの三つに分類しています。
グラインディングは、上下の歯を横にこすり合わせる動きです。いわゆる歯ぎしりの音が出るのはこのタイプで、歯の噛む面が平らにすり減りやすくなります。
クレンチングは、強く噛みしめて力をかけ続ける状態です。動きを伴わないため音が出ません。日中の食いしばりの多くは、このタイプにあたります。
タッピングは、上下の歯を小刻みに打ち合わせる動きです。カチカチという音が出ますが、三つの中では比較的少ないとされています。なお、一人が一つのタイプだけを示すとは限らず、複数のタイプが混在することもあります。
起床時と日中に分けて確かめると気づきやすくなります
「自分は歯ぎしりをしているのだろうか」。そう感じたとき、時間帯を分けて体の変化を確かめると手がかりが得られます。
睡眠中のものは起床直後に、日中の食いしばりは作業中に、それぞれサインが出やすいためです。朝と昼で確かめる内容が違う点を意識してみてください。
どちらも特別な道具は必要ありません。数日続けて確かめると、自分の傾向がつかめます。次でそれぞれの確認方法を解説します。
起床時に確かめたいサイン
目が覚めたとき、顎のあたりがだるく感じる、頬の筋肉が疲れている、こめかみが重いといった感覚がないかを確かめます。口が開けにくい感じが残ることもあります。
あわせて、口の中も見てみてください。頬の内側に白い線のような跡がついている、舌の縁が波打つように歯の形へ凹んでいるといった所見は、睡眠中に強い力がかかっていた手がかりになります。
これらの所見は、起床後しばらくすると薄れていきます。そのため、起きてすぐに確かめることが大切です。
日中に確かめたいサイン
作業に集中しているとき、ふと手を止めて口元の状態を確かめます。上下の歯が触れていた、あるいは噛みしめていたと気づくようであれば、覚醒時の食いしばりがある可能性があります。
夕方になると頬やこめかみが疲れる、肩や首のこりを感じるという方もいらっしゃいます。歯を食いしばると、頭や首につながる筋肉も一緒に緊張するためです。
気づいたときに、自分を責める必要はありません。気づけたこと自体が、対策の第一歩になります。
歯ぎしりが起こる原因として現在わかっていること

歯ぎしりを簡単に治す方法を考えるうえで、原因の理解は欠かせません。ただし歯ぎしりの原因は一つに絞り込めるものではなく、複数の要因が重なって生じると考えられています。
さらに、一般によく紹介されている原因の中には、現在の研究では主な原因として支持されていないものもあります。ここを取り違えると、必要のない処置を選んでしまうことにつながります。
ここでは、ストレスと睡眠、生活習慣、噛み合わせ、薬やほかの睡眠の問題という四つの観点から、現時点でわかっていることを解説します。
ストレスと睡眠中の微小覚醒が関わると考えられています
睡眠時ブラキシズムは、歯や顎そのものの問題というより、脳から筋肉への指令に関わる現象として捉えられています。Lavigneらが2008年にJournal of Oral Rehabilitationで発表した総説では、睡眠中の覚醒反応の高まりに伴って咀嚼筋の活動が現れる仕組みが示されています。
心理的なストレスとの関連も、繰り返し報告されています。日本歯科医師会の資料でも、ストレス、性格傾向、遺伝、一部の薬剤の使用、飲酒、喫煙などが関連因子として挙げられています。
ただし、ストレスだけで説明できるものではありません。「ストレスをなくさないと治らない」と考えると、かえって負担が増えることがあります。ストレスは関連する要因の一つと捉えるほうが現実的です。
飲酒・喫煙・カフェインとの関連が報告されています
生活習慣との関連については、比較的まとまった報告があります。Bertazzo-Silveiraらが2016年にJournal of the American Dental Associationで発表した系統的レビューでは、睡眠時ブラキシズムの生じやすさについて次のような結果が示されました。
飲酒習慣のある方ではおよそ2倍、1日8杯を超えるコーヒーを飲む方ではおよそ1.5倍、現在喫煙している方では2倍を超えるオッズ比が報告されています。オッズ比とは、その要因があるときに事象が起こりやすくなる度合いを示す指標です。
ただしこの系統的レビューでは、対象となった研究の質に限界があることも述べられており、因果関係が確定したわけではありません。
それでも、飲酒や喫煙、カフェインの量は自分で見直せる部分です。歯ぎしりを簡単に軽くする方法を探している方にとって、取り組みやすい入り口になります。
「噛み合わせが原因」という説明の現在の位置づけ
歯ぎしりの原因として、噛み合わせのずれを挙げる説明を目にすることがあります。ただ、この点については現在の知見が変わってきています。
日本歯科医師会の資料では、咬合異常が歯ぎしりの原因であるという説は科学的に支持されていないと述べられています。かつて有力とされた考え方が、研究の蓄積によって見直された形です。
この違いは、選ぶ対応に直結します。噛み合わせを整えるために歯を削る処置は、削った歯質を元に戻すことができません。歯ぎしりがあるという理由だけで、最初から行う対応ではないと考えられます。
噛み合わせが気になる場合も、まずは現在の状態を詳しく確かめることが先になります。
薬の影響やほかの睡眠の問題が関わることもあります
一部の薬剤の使用が、歯ぎしりと関連すると報告されています。日本歯科医師会の資料でも、特定の抗うつ薬の使用が関連因子として挙げられています。
思い当たる場合でも、自己判断で服薬を中止することは避けてください。処方を受けている医療機関にご相談ください。
また、睡眠中の呼吸に関わる問題や、胃酸の逆流が背景にある場合も報告されています。こうした場合は、歯ぎしりへの対応だけでは十分でないことがあります。相談の目安については、記事の後半で解説します。
歯ぎしりを簡単に軽くする対策|今日から自分でできること

ここからは、道具をそろえなくても今日から始められる方法を解説します。取り上げるのは、日中の食いしばりに気づく習慣づくり、就寝前の生活習慣の見直し、咀嚼筋のセルフマッサージ、寝具や姿勢の見直しの四つです。
いずれも歯ぎしりを完全になくすための方法ではありません。顎まわりの負担を軽くしたり、日中の食いしばりを減らしたりすることを目的としています。
最後に、セルフケアで期待できる範囲と難しい範囲についても解説します。どこまでを自分で行い、どこからを歯科医院に相談するかの目安としてご覧ください。
日中の食いしばりに気づく習慣をつくる
「気づいたときには、もう噛みしめている」。日中の食いしばりに悩む方から、よく聞かれる言葉です。
覚醒時の食いしばりは起きている間の出来事なので、気づく機会を増やすことで減らせる可能性があります。この方法は特別な道具を必要とせず、費用もかかりません。歯ぎしりを簡単に軽くする方法として、最も取り組みやすい選択肢です。
大切なのは、気づいたときに自分を責めないことです。噛みしめていたと気づいたら、力を抜いて歯を離す。これを繰り返すうちに、上下の歯が接触していない状態が自然になっていきます。具体的な進め方を二つご紹介します。
目印を使って歯が離れているかを確かめる
1日に何度も目に入る場所に、小さな目印を貼ります。パソコンの画面の縁、スマートフォンのケース、冷蔵庫の扉、洗面所の鏡などが向いています。
目印が目に入ったら、そのつど上下の歯が触れていないかを確かめます。触れていたら、息を吐きながら顎の力を抜いて歯を離します。
最初のうちは、目印を見ても確かめ忘れる日があります。それでも問題ありません。貼る場所を1か所ずつ増やしていくと、確かめる回数が自然に増えていきます。
上下の歯が触れない位置を体で覚える
力を抜いた状態の口の中の位置を、意識して覚えます。唇は軽く閉じ、上下の歯は触れないように少し離します。舌の先は、上の前歯の少し後ろにある膨らみに軽くつけます。
この状態が、安静にしているときの自然な口の中の位置です。目印を見て歯を離したあと、この位置に戻す流れをつくると意識しやすくなります。
顎に痛みがある場合や、行うと症状が強くなる場合は続けないでください。歯科医院でご相談ください。
就寝前の生活習慣を見直す
飲酒、喫煙、カフェインと睡眠時ブラキシズムとの関連については、先ほどご紹介した系統的レビューで報告されています。これらは自分で見直せる部分です。
ただし、見直せば必ず歯ぎしりが減るという性質のものではありません。報告されている関連因子に対して自分で取り組める、数少ない方法の一つと捉えてください。
あわせて、就寝前の過ごし方も睡眠の質に関わります。睡眠時ブラキシズムが眠りの浅い時間帯に多く生じることを踏まえると、眠りを妨げる習慣を減らす意味はあります。具体的な内容を次で解説します。
飲酒・喫煙・カフェインを摂るタイミングを整える
寝つきをよくするために就寝前にお酒を飲む習慣がある場合は、量と時間を見直します。就寝前の喫煙についても同様です。
カフェインについては、夕方以降のコーヒーや濃い緑茶、エナジードリンクの量を確かめます。「今日はいいか」と飲んでしまう日を作らないために、夕方以降に飲むものをあらかじめ決めておく方法があります。麦茶や白湯など、カフェインを含まない飲み物に置き換えると続けやすくなります。
急にすべてをやめる必要はありません。まずは1日の中で1回分を置き換えるところから始めてみてください。
咬筋と側頭筋のセルフマッサージ

先にお伝えしておきたいことがあります。マッサージは、歯ぎしりそのものを止める方法ではありません。朝の顎のだるさや、こめかみの疲れをやわらげることを目的としたケアです。
対象になるのは二つの筋肉です。一つは咬筋で、頬骨の下から顎のえら付近にかけて位置します。奥歯を噛みしめたときに硬く盛り上がる部分です。もう一つは側頭筋で、こめかみからその上のあたりに広がっています。
咬筋は、人差し指から薬指までの三本の指の腹を頬に当て、円を描くようにゆっくり動かします。側頭筋も、こめかみに指の腹を当てて同じように動かします。それぞれ1分程度が目安です。
入浴後など体が温まっているときに行うと、筋肉がゆるみやすくなります。
咬筋の発達とフェイスラインの関係についてより詳しくは以下をご覧ください。
>>親知らずを抜くと小顔になるのか|可能性と限界を歯科医が解説
行うときに注意したいこと
強く押しすぎないようにしてください。痛みを感じる強さは適切ではありません。痛気持ちよいと感じる手前の強さで、ゆっくり動かします。
顎の関節に痛みがある場合、口が開けにくい場合、開閉時に音がする場合は、自己流で続けずに歯科医院で状態を確かめてください。顎関節に問題がある状態でマッサージを続けると、症状が長引くことがあります。
マッサージガンなど強い刺激を与える器具については、顔まわりへの使用を想定していないものもあります。使用を検討する場合は、事前に歯科医院でご相談ください。
枕や寝る姿勢の見直しについて
枕の高さやうつ伏せ寝が歯ぎしりに関係するという情報を目にすることがあります。タオルを折って枕の高さを調整する方法も、手軽な対策として紹介されています。
確かに、うつ伏せや横向きの姿勢では、顎の片側に体重がかかります。姿勢によって顎まわりの負担が変わる可能性は考えられます。
ただし、寝具の調整が睡眠時ブラキシズムそのものを減らすという質の高い研究結果は、現時点では示されていません。試してみること自体に問題はありませんが、これだけで解決を期待する方法ではないと捉えてください。
「枕を変えたのに変化がない」と感じる場合も、方法が間違っているわけではありません。もともと大きな効果を見込みにくい対策であるためです。
セルフケアで期待できる範囲と、難しい範囲
ここまでご紹介した方法のうち、日中の食いしばりへの働きかけは、行動の工夫が届きやすい領域です。気づいて歯を離すという動作を繰り返すことで、接触している時間を減らせる可能性があります。
一方、睡眠中の筋活動を自分の意志で止めることは困難です。Jokubauskasらが2018年にJournal of Oral Rehabilitationで発表した系統的レビューとメタアナリシスでも、バイオフィードバック療法による睡眠時ブラキシズムへの効果は限定的であり、質の高い根拠は不足していると結論されています。
バイオフィードバックとは、筋肉の活動を検知して音や振動で本人に知らせる方法です。専用の機器を用いる方法でも十分な効果が示されていない以上、自己流の工夫で睡眠中の歯ぎしりを止めることは現実的ではありません。
そのため睡眠時の歯ぎしりに対しては、止めることではなく、歯を守ることが対応の中心になります。
歯ぎしりを簡単に治すために市販のマウスピースや家にあるもので代用するときの注意点

歯科医院に行かずに、簡単に済ませたい。そう考えて、市販のマウスピースや家にあるもので代用する方法を探す方もいらっしゃいます。
市販品は手に入れやすく、価格も抑えられます。ただ、歯科医院で作製するものとは異なる点がいくつかあります。その違いを知らないまま長く使うと、別の問題につながることがあります。
ここでは、市販品と歯科医院で作るナイトガードの違い、家にあるもので代用する方法について、そしてマウスピースが逆効果と言われることがある理由を解説します。
市販品と歯科医院で作るナイトガードの違い
市販のマウスピースの多くは、既製の形をお湯で軟らかくし、噛んで歯並びに合わせるタイプです。購入したその日から使える手軽さがあります。
歯科医院で作製するナイトガードは、歯型を採得し、その方の歯並びに合わせて作ります。装着したあとに当たりの強い部分を調整し、噛み合わせを確かめる工程も含まれます。
両者の違いは、主に適合の精度と、装着後に調整を受けられるかどうかです。市販品を選ぶこと自体を否定するものではありません。ただ、就寝中に長時間装着するものであるため、口の中で起きている変化に気づきにくい点は意識しておく必要があります。次で、具体的にどのような違いが影響するのかを解説します。
適合と厚みの違いが噛み合わせに影響することがあります
適合が十分でない装置を使うと、一部の歯だけに力が集中することがあります。また、装置の厚みによって上下の顎の位置関係が変わり、長期間の使用で噛み合わせに変化が生じる可能性も指摘されています。
市販品は、装着した本人が調整することを前提としていないため、当たりの強い部分があってもそのまま使い続けることになりがちです。
市販品を使っている方、これから使う方も、一度歯科医院で口の中の状態を確かめてもらう方法があります。装置のすり減り方から、力のかかり方を把握できることもあります。
タオルなど家にあるもので代用する方法について
タオルを折って噛む、別の用途のシリコン製品を流用するといった方法が紹介されていることがあります。手元にあるもので済ませたいという気持ちは自然なものです。
ただ、就寝中に口の中へ固定されていないものを入れる方法は、歯科医院としてお勧めできません。理由は主に二つあります。
一つは、睡眠中に位置がずれた場合、自分で対応できないことです。もう一つは、繰り返し使う布製品では衛生状態を保ちにくいことです。歯を守るという目的に対しても、力を均等に分散させる働きは期待しにくくなります。
費用の面で迷われている場合は、次でご説明する保険診療での作製について、歯科医院にご相談いただく方法があります。
マウスピースが逆効果と言われることがある理由
マウスピースを作ったのに歯ぎしりが止まらなかった、という声を耳にすることがあります。この背景には、装置に何を期待するかという認識の違いがあります。
Macedoらが2007年にコクラン・ライブラリで発表したシステマティックレビューでは、睡眠時ブラキシズムに対するオクルーザルスプリントの効果が検証されました。その結果、スプリントが睡眠時ブラキシズムそのものを減少させるという十分な根拠は得られませんでした。一方で、歯のすり減りに対しては利点がある可能性が示されています。
コクラン・ライブラリは、複数の無作為化比較試験を統合して評価する国際的な取り組みです。その評価において、ナイトガードは歯ぎしりを止める装置ではなく、歯を守る装置として位置づけられています。
この前提を共有できていれば、装着後の受け止め方も変わります。歯のすり減りが抑えられていること自体が、装置が働いている手がかりになります。
歯科医院で行う歯ぎしりを治すための対応

セルフケアを試しても顎の痛みが続く場合や、歯のすり減りが進んでいる場合には、歯科医院での対応を検討する段階です。
歯科医院では、歯のすり減り方、詰め物や被せ物の状態、顎の関節の動き、筋肉の緊張などを確かめたうえで、必要な対応を組み立てます。京都西院 ライフ歯科・矯正歯科・小児歯科でも、歯科用CTやマイクロスコープを用いた診査を行い、状態を把握したうえでご提案しています。
ここでは、ナイトガードによる保護、噛み合わせへの考え方、あわせて出ている症状への対応について解説します。
ナイトガード(スプリント)による保護
ナイトガードは、就寝時に装着する薄い装置です。歯型を採得して作製し、上下の歯が直接ぶつからないようにします。
主な目的は、歯や詰め物、被せ物に加わる力を分散させて守ることです。前の章でご紹介したとおり、歯ぎしりそのものを消失させる装置ではありません。この点を踏まえたうえで使うことが大切です。
装置には硬い素材のものと軟らかい素材のものがあり、歯ぎしりの強さや症状によって選択が変わります。装着感にも違いがあるため、実際に使ってみて調整を重ねることになります。
作製の可否や種類の選択は、診査の結果によって決まります。次で、費用面と使い始めたあとの確認について解説します。
保険診療で作製できる場合があります
歯ぎしりや顎関節症の診断のもとでナイトガードを作製する場合、公的医療保険が適用される取り扱いがあります。制度上、歯ぎしりに対する装置は保険診療の対象として定められています。
ただし、適用の可否は診査の結果と診断内容によって決まります。すべての方が保険診療の対象になるとは限りません。また、素材や形態によっては保険診療の範囲外となる場合があります。
具体的な取り扱いについては、受診時に歯科医師よりご説明いたします。費用の目安を知りたい場合も、あわせてお尋ねください。
装着を始めたあとに確認しておきたいこと
ナイトガードは、作って終わりではありません。定期的に状態を確かめることが必要になります。
確認するのは主に三つです。装置がすり減っていないか、特定の部分だけに強い当たりが出ていないか、そして噛み合わせに変化が生じていないかです。
装置のすり減り方は、どの歯にどの方向の力がかかっているかを知る手がかりにもなります。破損した場合や、装着していて違和感が続く場合は、そのまま使い続けずにご相談ください。定期的な検診の中で確認する流れをつくると、無理なく続けられます。
噛み合わせの調整を最初から行わない理由
歯ぎしりへの対応として、噛み合わせを整えるために歯を削る処置が紹介されることがあります。ただ、この対応には慎重な判断が必要です。
先に述べたとおり、咬合異常が歯ぎしりの原因であるという説は、現在の研究では主な原因として支持されていません。加えて、削った歯質は元に戻せません。効果が確かでない処置を、取り消せない形で行うことには慎重であるべきと考えられます。
歯を残すという観点からも、まずは現在の状態を詳しく確かめることが先になります。生活習慣や口腔内の状態を検査して原因を明らかにし、削る量を最小限に抑えるという考え方を、京都西院 ライフ歯科・矯正歯科・小児歯科では大切にしています。
顎の痛みや知覚過敏など、あわせて出ている症状への対応
歯ぎしりに伴って現れる症状は、対応する診療内容が異なります。
顎の関節に痛みがある、口が開けにくい、開閉時に音がするという場合は、顎関節症への対応が必要になることがあります。頬杖や長時間のスマートフォンの使用、片側だけで噛む癖など、歯ぎしり以外の要因が重なっていることも少なくありません。
冷たいものがしみる場合は、エナメル質がすり減って象牙質が露出していることがあります。詰め物や被せ物が外れやすい、欠けたという場合も、力のかかり方を確かめたうえで修復の方法を検討します。
気になる症状が複数ある場合も、まとめて確かめることができます。どこから相談すればよいかわからない場合も、感じている症状をそのままお伝えください。
歯ぎしりを治さずに放置した場合に起こりうること

歯ぎしりは、痛みを伴わないまま進むことが少なくありません。そのため、気になりながらも対応を先送りにしてしまう方がいらっしゃいます。
ただ、一度すり減った歯や欠けた歯が、自然に元へ戻ることはありません。どの段階で対応するかによって、必要な治療の範囲が変わります。
ここでは、歯そのものへの影響と、歯を支える組織や顎の関節への影響に分けて解説します。
歯のすり減り、破折、詰め物や被せ物の脱離
歯の表面を覆うエナメル質は、体の中で最も硬い組織です。それでも、長期間にわたって強い力が加わればすり減っていきます。
エナメル質がすり減ると、内側の象牙質が露出します。象牙質には神経につながる細い管が通っているため、冷たいものや風でしみる知覚過敏が起こりやすくなります。
力が一部の歯に集中すると、歯に亀裂が入ることもあります。とくに神経を失った歯は抵抗力が低下してもろくなりやすく、数年後に割れたり抜けたりすることがあります。
詰め物や被せ物にも影響します。接着している部分に繰り返し力が加わることで、外れやすくなったり、欠けたりすることがあります。
虫歯がないのに奥歯が痛むという症状についてより詳しくは以下をご覧ください。
>>虫歯じゃないのに奥歯が痛い原因とは|上下の奥歯で異なる原因と歯科での確かめ方
歯ぐきや顎の関節への影響
歯を支えているのは、歯槽骨と歯根膜と呼ばれる組織です。ここに過度な力が繰り返し加わると、歯を支える働きに影響が及ぶ可能性があります。歯周病がある場合、力の負担が重なることで状態に影響することも指摘されています。
顎の関節と咀嚼筋にも負担がかかります。日本歯科医師会の資料では、筋肉の疲労や起床時の一過性の痛み、関節の音や関節円板の位置の変化につながる可能性が示されています。
歯ぎしりがあるすべての方に、こうした変化が起こるわけではありません。生理的に耐えられる範囲を超えたときに問題になる、という捉え方が現在の考え方です。
歯ぎしりを自分で直そうとせず、歯科医院に相談したほうがよい状態

ここまで、歯ぎしりを簡単に軽くするために自分でできることを解説してきました。一方で、セルフケアを続けるよりも早めに相談したほうがよい状態もあります。
目安になるのは、痛みや口の開きにくさがあるかどうか、睡眠中の呼吸に関わる症状があるかどうか、そしてお子さまの場合は歯のすり減りが目立つかどうかです。
記事でご紹介した方法を数週間試しても変化がない場合も、相談の目安になります。次で具体的に解説します。
顎の痛みや、口が開けにくい状態が続く場合
顎を動かすと痛む、口が指2本分ほどしか開かない、開閉時に引っかかる感じや音があるといった状態が続く場合は、顎関節への対応が必要な段階です。
この状態で自己流のマッサージやストレッチを続けると、症状が長引くことがあります。まずは関節と筋肉の状態を確かめることが先になります。
痛みが強い時期と落ち着いている時期では、行う内容も変わります。自分で判断せず、現在の状態に合わせた方法をご確認ください。
大きないびきや日中の強い眠気をあわせて感じる場合
睡眠時ブラキシズムと睡眠時無呼吸との関連については、報告が分かれています。関連を指摘する研究がある一方、Błaszczykらが2024年にSleep Medicine Reviewsで発表したメタアナリシスでは、両者の間に統計的に有意な関連は示されませんでした。
そのため、歯ぎしりがあることをもって、睡眠時無呼吸を心配しすぎる必要はありません。
ただし、大きないびき、睡眠中に呼吸が止まっていると指摘された、日中に強い眠気があるといった症状は、それ自体を確かめておきたいものです。歯ぎしりとは別に、医科への相談をご検討ください。歯科医院でも、必要に応じて医科との連携についてご案内しています。
お子さまの歯ぎしりが気になる場合
お子さまの歯ぎしりの音が気になるというご相談は少なくありません。日本歯科医師会の資料によると、小児の睡眠時ブラキシズムがみられる割合はおよそ10〜20パーセントで、成人よりも高く報告されています。加齢とともに減少していくことも示されています。
乳歯から永久歯へ生え変わる時期には、顎の成長に伴って歯の位置が変化します。この時期の歯ぎしりは、成長の過程でみられることが多いとされています。
一方で、乳歯のすり減りが目立つ場合、朝に痛みを訴える場合、永久歯に生え変わったあとも続く場合は、一度確かめておくと安心です。
まとめ:歯ぎしりでお悩みの方は当院にご相談ください

歯ぎしりを簡単に治す方法を探すとき、鍵になるのは、睡眠中のものと日中のものを分けて考えることです。日中の食いしばりは、目印を使って歯が離れているかを確かめ、力を抜く動作を繰り返すことで減らせる可能性があります。飲酒や喫煙、カフェインの量を見直すことも、今日から始められる方法です。
一方、睡眠中の筋活動を自分の意志で止めることは困難です。専用の機器を用いるバイオフィードバック療法でも効果は限定的と報告されており、自己流の工夫で止めることは現実的ではありません。睡眠時の歯ぎしりに対しては、ナイトガードで歯を守る対応が中心になります。
噛み合わせを整えるために歯を削る処置は、取り消すことのできない処置です。歯ぎしりがあるという理由だけで、急いで選ぶ必要はありません。
京都府京都市右京区、西院駅から徒歩4分の京都西院 ライフ歯科・矯正歯科・小児歯科では、歯ぎしりへの対応において、生活習慣や口腔内の状態を検査して原因を明らかにしたうえで、削る量を最小限に抑えながら歯を残すことを大切にするという方針で取り組んでいます。朝の顎のだるさ、歯のすり減り、日中の食いしばりでお困りの方は、まずはお気軽にご相談ください。
参考文献
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日本睡眠歯科学会「診療ガイドライン」
日本補綴歯科学会「診療ガイドライン」